研究概要 |
大阪湾沿岸地域では,大規模埋め立てによる海底地盤,とりわけMa12以深の洪積層の長期沈下が重要な工学問題となっている。大阪湾洪積粘土地盤は,応力履歴(地質学)的には「正規圧密粘土」と推定されるが,圧密試験から求めた過圧密比は1.3前後である。また長期圧密試験から,変形が時間に対して不規則に進行する現象が古くから確認されている。洪積粘土の変形メカニズムの理解には,沖積粘土の挙動には見られない新たなパラダイムの構築が必要である。 大阪湾洪積粘土の堆積年代は,海底から100m付近のMa12層において約100万年(10^6年)Ma3層(深度約300m)に至っては約1,000万年(10^7年)である。高々数千年(10^3年)の沖積粘土と比較すると,3〜4オーダーも堆積年代が古い。沖積粘土と洪積粘土の力学挙動の違いの主要因は,堆積年代の違いによる「年代効果」にあると考えた。本研究の目的は,(1)年代効果による大阪湾洪積粘土の「構造特性」を定量化し,(2)「変形メカニズムを解明(モデル化)」した上で,(3)大規模埋め立てによる変形の時間依存性挙動の工学的予測法を確立すること,である。 昨年度までに、(1)を完了している。今年度は、(2)「変形メカニズムを解明(モデル化)」のために、構造の影響を評価できる弾塑性モデルのひとつである浅岡モデルを用いて、一連の実験結果のシミュレーションを実施した。この作業により、浅岡モデルの重要なパラメータである構造指数を室内試験結果から特定する手法を提案した。この研究成果は、わが国の地盤工学会と米国の地盤工学会の第1回国際ワークショップで発表すると同時に、米国土木学会論文集(ASCE)に投稿し、現在仮採択の通知を受けている。来年度は、ケーススタディーとして、大阪湾での沈埋トンネルの変形解析を実施する予定である。
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