研究課題
本研究の目的は、大阪湾沿岸地域で盛んに行われている大規模埋め立てによる海底地盤とりわけ堆積年代の古い洪積層の長期間にわたる変形の力学的なメカニズムの解明と地盤工学的な沈下予測法の確立にあった。そこで本研究では、以下(1)〜(3)の段階的プロセスを経ることにより、大阪湾洪積粘土地盤の変形メカニズムを解明した。(1)年代効果による大阪湾洪積粘土の「構造特性」の定量化(2)変形特性のモデル化(3)大規模埋め立てによる変形の時間依存性挙動の工学的予測法の確立平成14年度に、(1)を達成するために各種の室内土質実験を実施した。まず、200mにもおよぶ大深度の海底地盤から高品質の洪積粘土試料を採取した。つぎに、これら大深度試料の試験に耐えることのできる高圧三軸試験装置を新たに開発した。この試作装置を用いた一連の実験により、大阪湾洪積粘土は、約50万年前の古い堆積層にかかわらずその力学挙動は紛れもない「正規圧密粘土」であり、精度の高い標準圧密試験から測定した過圧密比は1.0に極めて近い事実が明らかとなった。したがって、沖積粘土よりも硬質で高強度であるの原因は、応力レベルの違いにより説明でき、これまでしばしば言われてきた「セメンテーション効果」は単なる幻想にすぎないことが判明した。さらに、各地層の力学特性の非一様性は小さい(即ち均質性が高い)ことも判った。平成15、16年度には、これら数々の新知見を取り入れた構造の発達した洪積粘土の構成モデルを提案した。このモデルは、浅岡らによるSYSモデルを基本としており、構造の発達した粘土およびセメンテーションの附加された粘土の応力・ひずみ・強度関係を適切に表現できることを示した。(1)と(2)の課題に関する研究成果は、それぞれ土木学会論文集および米国土木学会論文集に公表している。後者に関しては、2003年9月に行われた我が国の地盤工学会と米国の土木学会共催のワークショツプにおいて研究成果を公表している。(3)については、神戸空港の埋め立て地盤の長期沈下特性をある程度シミュレーションすることに成功しているが、現在進行中の工事であるため成果の公表には至っていない。工事完了後の適切な時期に、関係官庁の承諾を得て、解析結果を公表する予定である。
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Geotechnical Special Publication, ASCE Vol.1(in print)
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