研究概要 |
大阪湾などの海底地盤に堆積する洪積粘土の圧密特性,特に先行圧密圧付近の特異な沈下挙動を解明することが現在も進行する沈下の原因解明と対策の検討に不可欠であり,学術的・社会的な意味も大きいと考えられる.本研究では,この洪積粘土のひずみ経路制御K_0圧密試験を行い,K_0圧密過程における土の力学的挙動と構造変化を調べることを目的としている.またベンダーエレメントシステムを用いて,洪積粘土のK_0圧密中のせん断弾性係数を求め,間接的に粒子構造変化を考察した.さらに走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を行い,直接,粒子構造の変化を確認した.本研究の結果,次のような結論を得た. (1)ひずみ経路制御K_0圧密三軸試験では,DPVCを使って体積変化を直接制御することにより,精密かつ効率的に通常の非排水試験とほぼ同じ速度でK_0圧密を行えることが明らかになった. (2)試験の結果,洪積粘土の圧密特性,特に先行圧密圧p_c付近の挙動は間隙比が急激に減少するという,年代効果を受けた粘土特有の非常に特徴的なものであることがわかった.これは再構成粘土(カオリン)には見られない挙動である.また,K_0値はp_c付近まで減少し,その後急激に増加して一定値になるという変化が示され,このp_c付近で粘土粒子に構造変化が起きたと考えられる. (3)K_0圧密中のせん断弾性係数はG=100MPaあたりまでは増加を続けるが,それ以降はあまり変化がない.これはp_c付近での間隙比の急激な変化と関連しており,洪積粘土の構造自体が大きく変化したことがわかる. SEMの観察結果について,試験前にはあまり破壊していなかった珪藻類が,試験後には多数破壊しており,p_c付近での間隙の急激な減少の原因の一つとして,珪藻類の外骨格で保たれていた間隙が破壊されることにより起こる現象であると考えられる.
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