研究概要 |
今年度は,溶出性制御のため地盤中で生成させようとする鉱物の生成速度の実験室における測定を行なった.またそれに加えて関連鉱物による重金属イオン吸着の測定も行った. まず,3八面体型層状ケイ酸塩の生成速度を推定するため,シリカとマグネシアを混合して水分調節し,多数の密閉容器に封入して25℃で反応させた.鉱物は数日で生成し始め時間の経過とともに生成量は増加した.ただXRDによる定量は困難であったので,支出計画を変更してFTIRを購入し,FTIRスペクトルとXRDの併用によって定量のためのデータを得た.重金属共存系における実験でも,ほぼ同様に鉱物は生成したが,重金属類の取り込み部位を正確に決定するには至らなかった.これは来年度分光学的な方法を適用して再測定する予定である.層状ケイ酸塩の他,地盤中で重金属取り込みのため生成させる鉱物として,アカガネアイトも検討することにした.この鉱物の生成は早いものの,不安定であり,しだいに反応性の低いゲータイトに転換することから,土環境中におけるアカガネアイトからゲータイトへの転換速度の測定も行った.その結果土環境下での速度は非常に遅く定量的な結果を得ることができなかったので,高アルカリ,高温条件での加速試験を行った.現在,両鉱物に関する反応速度の解析中である. さらに,鉱物骨格への重金属類の取り込みの効果を評価するためには,それと表面への吸着を区別して評価する必要がある.そのためには土の構成鉱物による重金属類の吸着量を間隙水組成の関数として推定することが必要になる.その際に用いる吸着モデルのパラメータの測定値が十分でないことから,今年度はシリカ,ギブサイト,ハロイサイトによる2価鉄,2価マンガンおよび銅の吸着をpHの関数として測定した.また,酸性での溶出評価において重要なAlの関与するイオン交換平衡パラメータの測定も行った.
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