研究概要 |
昨年度に引き続き,フッ化物イオンを三八面体型スメクタイトの骨格に取り込んで不溶化する反応のモニタリングを継続した.つまりマグネシアとシリカの混合物にフッ化ナトリウムを添加し,生成物と,フッ化物イオン濃度を継続してモニタリングした.フッ化物イオンが存在したほうがスメクタイト生成反応が早く進行し,通常1ヶ月程度では観察できない001反射を与えるものが生成した.ただ,共存溶液のフッ化物イオン濃度は環境基準を下回るまでは短時間では低下せず,単独で適用できる不溶化技術としては問題あることがわかった.他の,短時間で効果のある方法と組み合わせることが必要と思われた. 今年度は,フッ化物イオンの不溶化だけでなく,鉛などの重金属イオンの不溶化も対象とした.方法としては,ゼオライト,炭酸塩,アロフェン質土などを添加し,これらと鉛イオンの反応を利用した不溶化技術における基礎反応と,それぞれの鉱物の寄与を判定することを目的とした.人工鉛汚染土にこれらの資材を単独あるいは複合して添加し,時間をおって鉛の形態変化,酸性化に対する溶出抵抗性を測定した.炭酸塩は,土のpHを上昇させることにより,ゼオライトは陽イオン交換基への吸着により重金属イオンの溶出を抑制した.そしてこれらを混合施用すると,酸性化に抵抗力のある溶出抑制技術となることがわかった.ただし,添加された炭酸塩を消費し尽くすほど高濃度の酸が大量に添加された場合には,むしろ未処理土よりも大量の鉛イオンを溶出させた.このようなことはありにくいことではあるが,適用には注意が必要であると考えられた.
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