研究概要 |
循環型社会への転換という社会的要請から、基礎工の分野において、環境負荷低減型であり、かつコスト縮減が期待できる基礎形式の開発が求められている。 本研究は、支持力改善のための基礎形式としてテーパーを有する杭基礎を対象とし、鋼材と砂との摩擦特性の検討、杭の押し広げ効果を把握するための模型試験装置の開発、押し広げによる支持力改善効果の把握、そして地盤の圧縮性を取り入れた鉛直支持力評価手法の確立と原位置での土質情報量に応じた地盤物性値の決定法の検討を行った。 得られた主な結論は以下の通りである。 (1)土粒子強さの異なる粒状材料と鋼材との摩擦特性-破砕性の影響の把握- ・砂の残留状態におけるせん断抵抗角φ'_r,杭材と地盤との相対粗さR_<max>/D_<50>,破砕性指標σ_n'/σ_<sf>から,杭の周面摩擦力を推定するための地盤物性値δ'を算定する手法を示した. (2)同心円状押し広げによる地盤内応力変化とテーパー形状杭の周面摩擦力改善効果 ・応力緩和は押し広げ後数時間で急速に進むが,増加した水平応力の全てが緩和してしまい初期の状態に収束するのではなく,応力緩和後もある一定量の残留応力(初期の増加量の70%-80%)が存在し続けることが確認できた ・杭の押し広げによる周面摩擦力改善効果は,周面摩擦力のピーク値の増加に加えて,正規化沈下量-周面摩擦力関係から得られる貫入初期の傾きの増加という点においても確認できた. (3)地盤の圧縮性を考慮したテーパー状押し広げ杭の鉛直支持力の評価 ・道路橋示方書・同解説に記されている極限支持力推定式を基礎として、地盤工学的な視点にたった空洞膨張理論を活用したテーパー杭の周面摩擦力度の推定法と極限先端支持力度の推定法を提示した。いずれの推定法も、地盤の物性や堆積環境の影響を考慮したものとなっている。 ・提案式の適用性を模型実験と原位置載荷試験結果との比較により確認した。また、今後の課題についても言及した。
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