研究概要 |
陸面ではその高い放射率とその不均一性のため,降水からのマイクロ波シグナルが捕まえにくいという課題に対して,マイクロ波放射計による土壌水分,植生水分量,積雪などの陸面水文量算定アルゴリズムと組み合わせることのできる雨滴を含む大気の下向きマイクロ波放射を表現できる4ストリーム放射伝達モデルを開発し,雲頂・雲底高度,降雨の存在高度,降雨強度の影響をシミュレーションにより明らかにした. このモデルの妥当性を検証するために,陸面水文量観測用地上マイクロ波放射計,大気水分観測用マイクロ波放射計,24GHzFM-CW方式一次元レーダ(マイクロレインレーダ),雨滴計,簡易気象観測システム,ラジオゾンデ装置を用いた降雨一次元観測システムを開発した.また,これにディジタルビデオカメラを用いた地上降雪観粒子観測装置を組み合わせて,降雪一次元観測システムを構築した. これらのシステムを米国アイオワ州に設置し,米国の農務省,航空宇宙局(NASA)と共同で地上,航空機,衛星観測実験を実施した.ここでは土壌水分,植生水分に関する観測データをもとに陸面水文量算定アルゴリズムの妥当性を検証することができたが,マイクロレインレーダが不備であったために降水系に関するデータは得られなかった. 次に.降雪を対象として上記システムを福井市設置し,Cバンド3次元偏波ドップラーレーダ観測とNASAによる航空機搭載マイクロ波放射計・降水レーダ観測,衛星との同期実験を行った.地上での大気観測では,レーダによる降水系の3次元分布,ゾンデによる気温・水蒸気の鉛直分布,ライダーによる雲底高度,ディジタルビデオカメラによる降雪観粒子,マイクロ波放射計による輝度温度の同時観測データが得られ,大気の下向きマイクロ波放射に雲の存在,その雲頂・雲底高度,降雪粒子の存在が影響を与えていることが明らかとなった.
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