研究概要 |
採泥装置の実用化について 引き上げモータと採泥器を組み合わせることによって,採取した浮泥と直上水の混合がほとんどない状態での採取が可能となった.採泥状態は,潜水により直接採水・採泥された海底泥に比較して乱れが極めて少ないことが確認された.作成した浮泥採取装置は,20mを超える水深の海底において直上水・浮遊泥・堆積泥を同時に,かつ,不攪乱の状態での採取できる等実用性の高い装置と言える.さらに,分析用サンプルの作成ができる採取泥の層切りシステムを完成した.これらの結果,採泥〜サンプル作成までのシステムが完成し,実用化が実現できた. 浮遊泥の堆積機構 この2年間に行った12回の観測から以下を明らかにした. 浮遊泥に含まれる栄養塩の特性として,(1)浮泥を堆積換算すると浮泥中に含まれるT-Nは直上水の約17000倍,T-Pは約30000倍であること.(2)T-NとT-Pは浮泥での値が大きいほど直上水中の値が大きくなる(比例関係)傾向にあること.(3)直上水中のI-N、I-Pと比較すると,浮泥の巻き上げ等に伴う間隙水の直上水への流入による直上水中のI-N、I-Pへの影響は小さく,浮泥自体が多量に海水中に浮上することの影響のほうが大きいことが確認された. 海底泥の変動特性として,(1)浮泥厚は季節的に変化しており,間隙水の水温低下が起こる(貧酸素化の解消される)秋以降に最も厚くなること.(2)海底泥中では間隙水の動きがあり,海水水温の上昇期には直上水が海底泥中に流入する方向,下降期には底泥から間隙水が海水中に流出する方向に流れがあること.(3)間隙水の動きがあることは底泥に含まれるクロロフィルa(フェオフィチン)の分布からも説明できること.(4)海底に埋設した浮泥サンプラーに5cm/月程度の浮泥が捕捉されており,浮泥が流動していること.(5)捕捉された浮泥量は海水温上昇期(8-9月)に多く,下降期(9-10月)に少ないことが確認された. 海底での流速は数cm/s程度であり,沈降した浮泥を動かすだけのせん断力を有しておらず、間隙水の流動を起こす力についても不明確な点が多い.これらについては,来年度以降の調査,解析によって把握することになる.
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