研究概要 |
広島湾奥の海底付近に存在する浮泥層を含めた底質の性状変化と浮泥層の形成機構について検討した.まず,3年間にわたって行ってきた浮泥調査をもとに浮泥の一般的な特性について明らかにした.これにより,浮泥層厚は海面表層からのデトリタス等の沈降,海底での水平移流(高濁度層の移流・沈降),堆積泥の再浮泥化(海水の底泥への流入・浸透)によって形成されることがわかった.特に,夏期に海底に存在する浮泥は主に高濁質の移流によって形成されていること,呉湾沖での高濁質層の形成は底泥中からの間隙水の流出と深い関係にあることが明らかにされた. 以上の結論に至った現象について以下にまとめる. 1)土の湿潤密度等の土質的性状から,堆積泥は夏季に非常に緩い堆積状態に変わる.特に,含水比は,20cmを越える泥深においても,季節的に200〜300%程度の変化をしており,少なくとも間隙水が底泥内で鉛直方向に流動している. 2)浮泥・堆積泥に含まれる栄養塩の季節変動から,底泥の数10cmにわたり湿潤状態が変化し,栄養塩,特に,クロロフィル-a,フェオフィチンが湿潤状態と同様に変動している. 3)底質の巻き上げは流れによって底泥が上昇することで起こると言われているが,直上流れが濁質の上昇を直接起こしておらず,濁度の上昇は,泥中から間隙水が海中に流出する時に濁質が海中に放出されることによって起こる.さらに,濁質の放出と同時にDOの消費(あるいは,無酸素水の流出)が起こっている.夏期における浮泥の生産は,間隙水の流出に伴って濁質が底層に浮遊し,底層に高濁質層を形成することが原因となっている.
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