研究概要 |
広島湾奥の海底付近に存在する浮泥層を含めた底質の性状変化と浮泥層の形成機構について検討した.このため,海底泥を乱さない状態で採取できる装置を開発し,これを用いて行ってきた浮泥調査をもとに浮泥の一般的な特性について明らかにした.本研究の成果を以下にまとめる. (1)浮泥の示標 浮泥の特性は湿潤度,有機物含有量,砂分混入量によって示すことができるが,浮泥と堆積泥を区別する示標として含水比が最も有効である.含水比が400%以上の採取泥を浮泥500%を越える含水比を有する浮泥層を高い濃度浮泥として扱った. (2)間隙水の流動と高濁度層の形成 浮泥層厚は海面表層からのデトリタス等の沈降,堆積泥の再浮泥化によって決定されることが示された. 1)不覚乱採取された底泥の湿潤状態から,堆積泥は夏季に非常に緩い堆積状態に変わることが明らかにされた.特に,20cmを越える泥深においても,間隙水が底泥内で鉛直方向に流動している. 2)含水比が500%程度以下の底質では巻き上げは海底流速が80cm/s以下では起こらないことが水路実験により確かめられた.実測された海底流速は数cm/sのオーダーであり,濁度と流速との相関はなかった.すなわち,呉湾沖南奥海底では直上流れが濁質上昇の直接的な起因ではなく,濁度の上昇は,泥中への流水の流入と間隙水の海中への流出による堆積泥層の膨張との関連が大きいことが推定された. 3)濁度の上昇は海底からの間隙水の流出のみによって起こっているのではなく,海水の泥内への流入も同時に起こっている.浮泥層の膨張により浮泥間の結合力の低下とそれに引き続く間隙水の流出が濁質の海中への浮遊を起こす主な原因である. 4)高濃度浮泥層は,成層期に底泥内での間隙水の流動が活発になり,海水の底泥内への流入が卓越することによって堆積泥層が膨張して形成されることを示すことができた.浮泥層が間隙水・海水の流入により膨張すると,間隙水の流出にともない濁質が底層に浮遊し,高濃度浮泥層が形成される.
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