研究概要 |
本研究は,水表面に撒布したアイス・キューブや,河川や沿岸の自然な水表面の微細な温度ムラをトレーサーとして,昼夜を問わず精密表面流速計測ができる赤外線PIV技術を確立するとともに,水域におけるメソ・スケール・リモート・センシング技術の開発を目的としている. 本年度は,特に赤外線PTVシステムの開発を課題とし,高性能赤外線カメラ(三菱サーマルイメージャIR-M700)を導入した.また,水環境計測におけるトレーサーとして氷や煎餅を用いて,赤外線カメラによる視認性の確認を基礎実験として行った.その結果,以下のことが確認された. 1.煎餅を凍るまで冷やして水に浮かべた場合,約10分間にわたって赤外線カメラによる視認性が保たれ,トレーサーとしての時間的保存性も十分であることが確認された. 2.トレーサーとしての妥当性を検討するために,直径2.5cmの氷を用い,赤外線カメラによる空気中での氷の視認実験を行った結果,距離40mまでは氷を視認することができた.従って,例えば高度300mで撮影するときの氷の直径は20cm以上でなければならない. さらに,淀川において高度300mの高さからヘリコプターに乗せた赤外線カメラで水面上の氷の視認実験を行った.使用した氷は1辺17cm立方体である.約1,000個の氷を流したが、実際に視認できたのは10個程度であった.このことは逆に,上記の基礎実験結果(高度300mでは直径20cm以上)を裏付けるものである. 次年度は直径25cm程度の氷板を用いて再度現地実験を行うとともに,トレーサーの撒布方法の決定など,現地観測を重点的に行うことにより,赤外線PIV技術の開発を進める.
|