研究概要 |
本研究は,現実経済に存在する次善要因を考慮できる交通施設整備の便益評価手法の開発を目的としている.今年度については以下にあげる研究成果を得ている. (1)現実経済に存在する次善要因としてa)環境外部性,b)独占・寡占企業による価格支配,c)各種規制等を経済モデルに導入し,交通便益評価式を導出した.その結果,発生ベースのみで便益を計測することは不十分であること,さらにどのような経済的歪みを他に考慮すべきかを明らかにした. (2)次善要因a),b),c)それぞれの要因についてその経済的歪みの実際的計測方法について検討した. a)環境外部性については,多くのマニュアルおよび研究でCVMあるいはTCM,へドニックアプローチによる計測など実際的手法が既に検討されている.しかし,CVMは顕示された行動に基づかないため信頼性に疑問がある.TCMは訪問するような財のみに適用可能である.ヘドニックアプローチの場合は,small-openの仮定(あるいはKanemoto(1988)で示された仮定)が必要である.本研究では,プロジェクトが大きく,small-openが成立しない場合の環境質の評価値を計測する手法を開発した.なお,その開発した手法の実証的なパフォーマンスについて検討している段階である. b)独占・寡占企業による価格支配については価格支配度を測る指標であるラーナーの独占度を利用して,各市場別要因の推計段階(価格支配の程度)と,一般均衡を反映した交通施設整備の便益計測段階(価格支配のある場合の便益計測)を分ける方法を提案した. c)各種規制等については,道路混雑等の外部不経済対策である容積率規制と道路投資の組み合わせ政策手法を分析している.これにより,容積率規制が行われている次善の経済においても,常に適正な容積率規制が達成されている状況では,道路市場のみで道路投資の便益を計測できることを示した.
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