研究概要 |
本研究は,次善要因を考慮できる交通施設整備の便益評価手法の開発を目的としている.今年度については次善要因として環境外部性に着目して分析を行った、a)環境外部性の計測は,CVMあるいはTCM,ヘドニックアプローチによる計測が提案されている.しかし,CVMは顕示された行動に基づかないため信頼性に疑問がある.TCMは訪問するような財のみに適用可能である.ヘドニックアプローチの場合は,small-openの仮定(あるいはKanemoto(1988)で示された仮定)が必要である.本研究では,プロジェクトが大きく,small-openが成立しない場合の環境質の価値を計測する手法を開発した.具体的には時系列の地価変化を用いて計測する手法である.その手法を仙台市の生活道路の便益計測に適用し,実証的なパフォーマンスについて検討した.この方法は用いる変数がヘドニックアプローチに比べて少ないため,多重共線性を避けることが可能といった利点を有している. b)環境の外部性を計測する手法として,TCMがある.この手法は顕示選好データから便益を計測できるという利点を有している.しかし,環境の外部性(例:公園等)を計測するためには,訪問することに対する最大支払い意思額を知る必要がある一方,実際に顕示されたデータは旅行費用に関する需要関数である.すなわち,現在のTCMでは旅行費用と最大支払い意思額が代替可能と暗黙裏に仮定されている、しかし,公園が複数ある場合,この仮定は成立しない、本研究では公園が複数ある場合について,上記で示した現在のTCMの問題点の指摘とその改善方法の提案を行った.さらに,TCMに用いる旅行費用変化による需要関数は,旅行費用変化による価格ベクトルの変化を考慮していない.特に,地価は大きく変化するため,この変化を考慮したTCMとする必要がある.これらの考慮方法についても本研究で提案した.
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