研究概要 |
貿易関連,港湾整備関連,社会経済統計関連の各種最新データを入手し,モデルにインプットできる形式に整理した.また,将来シナリオ想定のための基礎資料としての集計も行った. 世界の主要港湾および日本の各港湾の今後の整備水準の想定を行った.対象年次は2010年と2020年の2時点とし,現状および公表されている整備計画を基準として,それぞれ様々なシナリオを想定した.また,海運業の生産性の変化や輸送時間の変化,海運業の資本や労働の国籍分布についても,将来想定を行った.その際,各国経済予測の基礎データとしてはIMFやESCAPなど,国際機関の予測値を利用し,各地域間の貿易量については,本研究において開発した一般均衡モデルにより予測を行った.本研究において開発したモデルは,港湾整備や海上輸送の効率化が貿易量および各国経済に与える影響を考慮した需要予測を行えるよう,既存の多地域応用一般均衡モデルにおける輸送関連項目を充実させて,それらの影響が明示的に表現できるようにしたものである. 各想定シナリオの下で需要予測とともに便益計測を行った.便益計測は,貿易量予測と併せて多地域応用一般均衡モデルにより行った.結果は港湾整備が自地域のみならず,他地域にも便益をもたらすことが推察されるものであり,港湾を整備するほど,また海運業の資本や労働を多地域に依存しているほど他地域へ波及する便益は大きいことが確認された.地域ごと産業ごとに帰着する便益を詳細に計測するため,各港湾背後地の港湾関連産業および港湾利用産業に着目した部分均衡モデルによる計算も行った.
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