研究概要 |
本研究は道路・公共施設ユーザーとして,高齢者を対象とし,高齢ドライバーから高齢歩行者までを包含した形で様々な情報提示の場を設定することを目的としている.そのため視覚実験を実施し,現在の標識の機能を評価した上で,今後高齢者が安全で安心して移動できる環境づくりについて研究を行う.今年度は高齢ドライバーを考慮した情報提示のあり方について実験を行った.その知見として,(1)一般的な静止視力・動態視力・暗順応試験などの視力試験を実施した.また,当初は運転しながらの環境を計測するために,実走実験を行うことを企画していたが,安全面の問題もあるため運転シミュレータを用いた反応試験を実施した.その結果,高齢ドライバーは若年者よりも一般的な視力にさほど違いはないが,反応試験に関しては平均して0.2秒程度の反応時間遅れが見られた.また,運転視野も狭いことが判明した. (2)画像を見ながらの視線に関する実験を行った.その結果,注視箇所に関しては個人差があり,今後分析を必要とする. (3)脳出血や脳梗塞などの疾病は高齢者に多く見られるため,今回は高次脳機能障害に関する試験を実施した.若年者と比較すると若干その傾向が見られるため今後注意深く分析するつもりでいる. (4)歩行環境については電動車いすの利用状況を把握することが出来た.電動車いすの利用で高齢者のモビリティは2〜3kmに伸びるという予測が出来たため,来年度以降も自動車を始めとする私的交通手段と高齢者のモビリティについて分析を深めて行くつもりである.また痴呆性高齢者の外出環境も調査し,歩車分離や明確な歩行者横断信号の必要性が判明した. (5)来年度は今年度実施した実験結果をもとに運転環境における標識・サインのあり方を検討すること,および高齢歩行者を対象にした実験を実施して歩行環境における標識・サインの方向性を考察することを予定している.
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