研究概要 |
水処理における凝集処理は,そのままでは沈殿やろ過によって分離できない数μm以下の粒子を集塊させる操作である.アルミニウムのような金属塩の凝集剤を水中に添加すると,加水分解し水酸化ポリマーが生成する.水中の懸濁質やバクテリアなどは,この加水分解過程で生成する水酸化ポリマーによって不安定化し凝集・粗大化する.これまで,ウイルスは水酸化ポリマーに吸着することによって除去されると想像されてきた.,しかし,我々は最近,アルミニウム凝集剤の加水分解過程でウイルスが不活化されていることを,バクテリオファージを使った実験で発見した.ウイルスの不活化効果は,硫酸アルミニウムや塩化アルミニウムなどのアルミニウム系凝集剤の中でも,ポリ塩化アルミニウム(PAC)の場合はウイルスの濃度はさらに大きく低下,ウイルスの不活化効果は大きかった.さらに,ウイルス不活化の原因は,凝集剤中の不純物や凝集剤添加によるpHの低下,フロック溶解時のアルカリ反応によるものではないことを確認した.純水に比べて河川水などの自然水中では,ウイルスの不活化効果は低下するが,これには水中の有機物質が関与していることもわかった.これらの結果は,QBとP1,MS2,T4の4種類のバクテリオファージ全てに見られた.この効果によって,凝集沈殿処理ではウイルス濃度が潜在的に低減化されていた可能性が高いと考える.
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