研究概要 |
水処理における凝集処理では,水中の懸濁質やバクテリアなどは,アルミニウムの加水分解過程で生成する水酸化ポリマーによって不安定化し凝集・粗大化する.この研究で,アルミニウム凝集剤の加水分解過程でウイルスが不活化によって低減化されていることを見出した.さらに,ウイルス不活化の原因は,凝集剤中の不純物や凝集剤添加によるpHの低下,フロック溶解時のアルカリ反応によるものではないことを確認した.純水に比べて河川水などの自然水中では,ウイルスの不活化効果は低下するが,これには水中の有機物質が関与していることもわかった.これらの結果は,QβとP1,MS2,T4の4種類のバクテリオファージ全てに見られた.本年度は,アルミニウムや鉄系凝集剤が有するウイルスの不活化現象をさらに詳しく調べ,そのメカニズムについて検討した.その結果,以下の知見を得た。 1.凝集剤との接触後、ウィルスQβの濃度をプラック形成法とPCR法で計数したところ,プラック形成法による感染性ウイルス濃度は10^<4.0>PFU/mL,PCR法による全ウイルス濃度は10^<8.1>PFU/mLとなった.このことは,アルミニウムフロックに取り込まれていない状態でウイルスが不活化されていること示している.しかし,ウイルスの大半はフロックに捕捉されたため感染性を消失したと考えられる。 2.フロック溶解を長時間継続することで、感染性ウイルス濃度は増加したが、初期濃度まで回復しなかった。この回復しなかったウイルスが不活化されたウイルスで、主にフロック内で不活化されたと考えられる。 3.ウイルスQβの電気泳動度を測定し,ゼータ電位は5-15mV程度であり,pHが低くなるにつれて絶対値が小さくなることがわかった.
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