アジア都市の動的発展転換プロセスと環境変化に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14350285
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 井村 秀文 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (20203333)
• 研究分担者: 松本 亨 北九州市立大学, 国際環境工学部, 助教授 (50274519) ; 森杉 雅史 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助手 (00314039) ; 奥田 隆明 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助教授 (40233457) ; 金子 慎治 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (00346529) ; 中山 裕文 九州大学, 大学院・工学研究科, 助手 (60325511)
• キーワード: アジアの急速な経済発展 / 環境クズネッツ曲線

研究概要

昨年度ではアジア諸国の都市に関して、都市の活動水準に関する情報を各種の経済社会統計、空間情報(土地利用や衛星画像情報も含む)、環境負荷排出量等のデータを収集・整備することに主とし、発展ステージに系統づけ、経済発展と多面的な環境問題発生の因果関係を簡潔なモデル推計の下で考察した。
途上国の経済発展と環境問題には表層的に、貧困→工業化→産業公害→所得上昇→都市・生活型問題→資源・エネルギー消費の増大→地球環境問題→持続可能な生産・消費への転換、といった環境クズネッツ曲線で表されるような経験則が確認される。このような因果即が確固として得られる場合、途上国には比較的初期の発展の段階から環境問題に取り組むことで、経路全体の環境負荷を効率的に削減することが可能である。今年度では対象をデータ入手しやすい中国の諸都市に特に重点を置き、民生部門、産業部門においてパラメータや構造式の同定、技術や生活スタイルの変化など、モデルの構造細部の検証に努めることとした。
松本ら(2003)では、家庭用エネルギーについては石炭から都市ガスや天然ガスへより低負荷型燃源へシフト傾向があり、事業用については電力消費量の増加が著しいことが示された。中山ら(2003)では都市の経済成長と市街地拡大についての検討を成長会計分析を推計し、TFP成長率の高いところは市街地面積の拡大は緩やかであり、技術開発の活発な地域では土地集約性の高い発展を遂げていることが示された。奥田ら(2003)、小澤ら(2003)、中村ら(2003)、園田ら(2003)では分析単位は中国の省であるが、近年の外需の急速な増加による沿岸部の経済発展は、主に生産性サイドにおいて資源投入と結果としての環境負荷排出について産業連関分析、DEA、システムダイナミクスなどを用いて定量的分析及び将来予測を行い、経済及び資源消費・環境負荷に観点から地域格差にどのような影響を与えているかについて吟味している。
これら各々の視点から見た経済発展と環境負荷の因果関係の検証結果を踏まえ、整合性を持たせながら次年度以降には総合モデルと政策シナリオを展開する予定である。

研究成果

• [文献書誌] 中山裕文, 高尾彰, 島岡隆行, 井村秀文: "中国都市の経済成長と市街地拡大に関する一考察"環境システム研究論文集. Vo1.31. 227-233 (2003)
• [文献書誌] 奥田隆明, 種蔵史典, 幡野貴之, 斉舒暢: "中国省市区レベルの地域間産業連関表の推計とその分析"土木計画学研究・講演集. No.28(CD-ROM). (2003)
• [文献書誌] 福田篤史, 中村英佑, 園田益史, 森杉雅史, 井村秀: "土地利用と農業生産から見た環境効率性評価に関する研究"環境システム研究論文集. Vol.31. 91-100 (2003)
• [文献書誌] 中村英佑, 森杉雅史, 井村秀文: "国際的相互依存と環境公平性に関する研究"環境システム研究論文集. Vol.31. 395-404 (2003)
• [文献書誌] 園田益史, 森杉雅史, 井村秀文: "環境負荷低減のためのDEAを用いた中国各省の農業生産性の比較研究"環境システム研究論文発表会講演集. Vol.31. 315-322 (2003)
• [文献書誌] 常杪, 井村秀文: "アジアの都市環境インフラ整備における国際開発機関・ODAの新たな役割-官民協力体制構築への支援-"国際開発研研究. Vol.12(2). 29-44 (2003)
• [文献書誌] Reiji HITSUMOTO, Hidefumi IMURA: "Study on Capacity Building of Environmental Management in Asian Cities"Journal of Environmental Engineering. Vol.9/Oct. 53-64 (2003)
• [文献書誌] Shobhakar DHAKAl, Shinji KANEKO, Hidefumi IMURA: "CO2 Emissions from Energy Use in East Asian Mega-Cities : Driving Factors and Their Contributions"Environmental Systems Research. Vol.31. 209-216 (2003)
• [文献書誌] Mushtaq ahmed MEMON, Hidefumi IMURA, Reiji HITSUMOTO: "Urban Environmental Management : Local Capacity Building Through International Cooperation"Environmental Systems Research. Vol.31. 245-256 (2003)
• [文献書誌] 小澤亮輔, 小川茂, 方偉華, 井村秀文: "中国黄河流域の水資源需要将来予測に関する研究"環境システム研究論文発表会講演集. Vol.31. 295-302 (2003)
• [文献書誌] 松本 亨, 左 健, 韋 新東, 石崎美代子: "アジア巨大都市における民生部門エネルギー需要の将来予測"環境シンポジウム講演論文集. 47-53 (2003)
• [文献書誌] 韋 新東, 松本 亨: "アジア巨大都市の民生部門二酸化炭素排出量予測とシナリオアプローチによる対策評価"環境共生学会第6回学術大会大会記念発表論文集. 9-14 (2003)
• [文献書誌] 井村秀文(共著): "中国リスク高成長の落とし穴-第10章経済成長を制約し始めた環境問題"日本経済新聞社. 32 (2003)
• [文献書誌] 常杪, 井村秀文: "アジアにおける都市環境インフラ養備の促進戦略-政府と民間の役割分担と協力-"東洋経済新報社. 16 (2003)