研究概要 |
都市エネルギー供給システムの適正化の方法論とその評価は,脱化石燃料社会を目指す上で極めて重要な課題と考えられる。従来,地域暖房による熱エネルギー利用の効率化と熱源としての排熱利用の先進的な例として北欧の実例が紹介されているが,それら高緯度の都市と名古屋やテッサロニキのような中緯度の都市およびジョホールバルのような熱帯の都市について,気候特性,利用可能な未利用エネルギーの地域特性を考慮しての比較研究により当該システムの特性をLCA(二酸化炭素,エネルギー)的に把握する試みはなかった。本研究では、これらの実施を目的とする。本年度は、平成14年度9月中旬から下旬にかけてコペンハーゲン、ヨーテボリ、ハノーバーに関する現地調査を行い、ヨーテボリ大学チャン教授研究室、ハノーバー大学エトリングおよびグロス両教授研究室と共同で作業を行った。現地調査によって、ヨーテボリでは:地域熱供給会社(ヨーテボリエネルギー会社)の熱供給事業に関する詳細なデータ、重要な熱源であるゴミ焼却会社リノバの熱回収・発電の実態データ、ハノーバーでは:ユーティリティ供給会社エナシティーの電気、ガス、地域熱供給に関するデータ取得、風力発電、太陽光エネルギー利用の実態、バイオガスによるコジェネ・風力発電を柱とした実験的なコミュニティ"エナコン"に関するデータを収集した。さらに、コペンハーゲンでは:コペンハーゲン首都圏の地域熱供給会社に関する実態調査を行った。もっとも強力に地域熱供給(DH)を推進しているのは、ヨーテボリ(人口47万人;供給熱量3500GWh/y)、続いてコペンハーゲン(人口138万人;同4700GWh/y)、最後にハノーバー(人口53万人;同1370GWh/y)である。ハノーバーはゴミ焼却場をもたず地域熱供給の熱源は天然ガス等のコジェネであったが、ヨーテボリとコペンハーゲンの2市はいずれもゴミ焼却がDHの主要熱源であった。
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