研究概要 |
都市エネルギー供給システムの適正化の方法論とその評価は,脱化石燃料社会を目指す上で極めて重要な課題と考えられる。従来,地域暖房による熱エネルギー利用の効率化と熱源としての排熱利用の先進的な例として北欧の実例が紹介されているが,それら高緯度の都市と名古屋やテッサロニキのような中緯度の都市およびジョホールバルのような熱帯の都市について,気候特性,利用可能な未利用エネルギーの地域特性を考慮しての比較研究により当該システムの特性をLCA(二酸化炭素,エネルギー)的に把握する試みはなかった。本研究では、これらの実施を目的とした。研究で得られた成果は(1)ヨーテボリ(北緯57.5度)、コペンハーゲン、ハノーバー、テッサロニキ、名古屋、ジョホールバル(北緯1.5度)の現地調査を行い、都市のエネルギー供給、需要、再生可能エネルギーの賦存量とその利用状況および環境要素に関する基礎データを広範に収集した、(2)地域熱供給(DH)の推進度合いでは、ヨーテボリ(人口47万人,供給熱量3500GWh/y)、コペンハーゲン(人口138万人;同4700GWh/y)、ハノーバー(人口53万人;同1370GWh/y)である。熱源に対する再生可能エネルギーの利用度では、ヨーテボリ、コペンハーゲンがゴミ焼却廃熱、下水廃熱を主熱源とし、ハノーバーは天然ガスによるコジェネレーションが熱源、(3)ヨーテボリ地域熱供給会杜の主要な熱源であるゴミ焼却熱の利用実態と同規模の名古屋のゴミ焼却工場の廃熱利用を詳細に比較し、名古屋の熱利用はヨーテボリの数十分の一であることを示した、(4)都市エネルギー需要・供給構造を未利用エネルギー利用型にするための方策を評価できるシステムダイナミックスモデルを構築した、(5)ジョホールバル、名古屋について森林から農地や都市域への土地利用変換に伴う熱環境の変化を、1970年-2020年にわたって予測する方法を提示した。
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