研究概要 |
本年度においては、特性の異なる5種の内分泌撹乱物質(ビスフェノールA(BPA)、17-βエストラジオール(E2)、ノニルフェノール(NP)、フタル酸ジエチル(DEP)、2,4-ジクロロフェノール(2,4-DCP))を対象に、それぞれの単独系及び他物質(下水二次処理水、フミン酸、フルボ酸)との共存で低圧逆浸透膜による分離実験を行い、各物質の挙動を明らかにした。 単独系では前年度までの結果から予想されるように、解維しないもの(DEP)については比較的除去率が低く、pH依存性がなかった。一方、解維するもの(DEP以外)についてはpHの上昇とともに除去率も向上した。とくに2,4-DCP(pka=7.9)については他の物質(pka約10)よりその傾向が強かった。これは、溶質の解維状態と膜の電位ζが溶質分離に寄与することを示している。 一方、共存系においては、とくにフミン酸が共存する時に各内分泌撹乱物質の除去率が上昇した。フルボ酸との共存系ではDEPのように除去率が若干上昇するものもあったが、フミン酸ほど顕著な傾向はなかった。フミン酸とフルボ酸への各内分泌撹乱物質の収着係数を蛍光消光法により測定したところ、フミン酸への内分泌撹乱物質収着係数はフルボ酸のそれの約2倍であり、内分泌撹乱物質はフミン酸のような高分子物質に収着して除去される機構が考えられる。また、下水二次処理水との共存系では除去率が上昇する物質と顕著な影響がみられない場合とがあった。これにはフルボ酸に収着した内分泌撹乱物質がフルボ酸とともに膜を通過が考えられるが、不明な点もある。溶質の分離挙動は膜と溶質のもつ電荷からかなり説明できるものの、膜や溶質の疎水性や親水性にかかる複雑な要素が関っていると考えられた。
|