研究概要 |
地震時の建築構造物の挙動を正確に推定するためには、動的な応力や変形の下での部材の特性を正しく理解することが重要である。そこで,鉄筋コンクリート梁部材を対象として、主筋の配筋量、せん断補強量、シヤスパン比、入力せん断応力度レベル、せん断補強筋の強度、加力履歴などを変動因子とした延べ19体の1/3スケールの試験体を作成し、動的繰り返し載荷実験と準静的載荷実験を行い、部材の挙動を比較して載荷速度の影響を実験的・解析的に明らかにした。本研究によって得られた主な結論は、以下の通りである。 1.動的載荷をした試験体では対となる静的に載荷をした試験体と比較して,曲げ降伏時入力せん断力が上昇した。この強度上昇は鉄筋の歪速度の影響を考慮した材料特性を用いることにより精度よく推定することができた。 2.各種の異なる諸元の試験体について,それぞれ曲げ降伏後耐力低下が始まる変形は載荷速度にほとんど影響を受けなかった。また,せん断余裕度が同じであれば,入力せん断力レベルやせん断補強筋の強度は耐力低下が始まる変形には影響を受けなかった。一方向で繰り返し載荷した試験体は,対となる正負繰返しの試験体と比較して耐力低下に遅延が起った。 3.主筋に特別な加工を施すことにより主筋の曲げ降伏後の圧縮鉄筋および引張り鉄筋の応力についての実験データが得ることができた。実験から得られた鉄筋の応力の値は,曲げ降伏までは曲げ解析により推定される鉄筋の応力の値に対してほぼ対応していたが,曲げ降伏後以降差が生じ,引張り鉄筋の応力は危険断面から断面せい程度の範囲で応力勾配がゼロに近づくこと,圧縮鉄筋の応力は,正負繰返しが進むほど実験値が計算値より大きくなっていった。
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