地域の林業再生を目指した信州産からまつ集成材の大規模木質構造物への利用

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14350299
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 笹川 明 信州大学, 工学部, 教授 (00017922)
• 研究分担者: 森 拓郎 京都大学, 生存圏研究所, 助手 (00335225) ; 橋爪 丈夫 長野県林業総合センター, 木材部, 部長 ; 武田 孝志 信州大学, 農学部, 助教授 (50242673)
• キーワード: カラマツ / 集成材 / 柱-梁接合部 / クリープ

研究概要

[大断面集成材柱-梁接合部実験]
本研究では、大断面集成材を用いて、伝統構法における通し貫接合を応用した柱-梁接合部を提案し、その接合部の静的加力実験を行い、力学的性能を明らかにすることを目的としている。
試験体は、信州産カラマツ集成材(強度等級E105-F300)であり、寸法は、梁材:150×600×3400mm、柱材:300×400×2600mmである。試験体の接合部仕様は、接着剤のみで接合したもの(B)、接着剤とボルト4本で接合したもの(B.4B)、接着剤とボルト8本で接合したもの(B.8B)、接着剤とボルト4本及びシアプレートで接合したもの(B.8B.G)、以上4種類である。各3体の実験を行った。実験結果を、接合部のモーメント-真の変形角曲線を用いて、木造軸組工法の評価方法に準じて評価し、最大モーメントMmax、降伏モーメントMy、回転剛性K、塑性率を算出した。
破壊性状はすべての試験体で接合部の接着面の剥離、梁材と柱材の支圧面のめり込みが見られ、ボルトを使用したすべての試験体でボルトの変形が見られた。また、B.8Bはパネルゾーンに亀裂が見られ、支圧面のめり込みは他の試験体に比べ少なかった。
最大モーメントは、B.8Bが最も高い値であった。次いで、B.4B.G、B、B.4Bの順であった。BがB.4Bより高い値であることから、今回提案した仕様の中では、4本のボルトの有無よりも接着面積率の方が最大モーメントへの影響が大きいと考えられる。また、B8Bは接着面積率が大きく且つボルトが8本と多いため、各試験体の中で最大値を示したと考えられる。ただし、B.4B.Gは他の試験体と機構が異なり、接着剤剥離後もシアプレート及びボルトが有効に作用し、モーメントが上昇したまま試験機のストロークの限界を迎えたため、実験を終了した。以上の事より、本研究で提案した接合部では、最大モーメントは、接着面積率とボルトの使用方法の相互作用により決まると言える。回転剛性は、B.8B、B、B.4B、B.4B.Gの順であった。この順番は接着面積率と同じである。Bは、接着面積率が高く、回転剛性にバラツキがほとんど見られなかった。B.4B、B.8Bは回転剛性、接着面積率にバラツキが見られた。これは、ボルト本数や施工による誤差などが影響したと考えられる。よって、80%以上の接着面積率を保持していれば、安定した高い回転剛性が得ることができると言える。また、接着剤のみの接合であるBは、接着剤剥離後は、純粋な通し貫接合部と近似した挙動を示した。
[大断面集成材クリープ実験]
昨年度に引き続き実験が継続中であり、現在データの蓄積中である。

研究成果

• [文献書誌] 矢島賢一, 森拓郎, 神戸渡, 橋爪丈夫, 武田孝志, 齋藤潔,笹川明: "信州産カラマツ大断面集成材の曲げ強度特性に関する実験的研究"2003年度 日本建築学会大会学術講演梗概集. C-1. 499-500 (2003)
• [文献書誌] 武田孝志, 神戸渡, 上田一郎, 矢島賢一, 橋爪丈夫, 森拓郎, 齋藤潔, 笹川明: "信州産カラマツ大断面集成材の曲げクリープ特性に関する実験的研究 その1 載荷方法と実験経過"2003年度 日本建築学会大会学術講演梗概集. C-1. 501-502 (2003)
• [文献書誌] 矢島賢一, 森拓郎, 神戸渡, 橋爪丈夫, 武田孝志, 笹川明: "信州産カラマツ大断面集成材の曲げ強度特性に関する実験的研究"日本建築学会北陸支部研究報告集. 第46号. 49-52 (2003)
• [文献書誌] W.Kambe, T.Mori, T.Hashizume, T.Takeda, A.Sasagawa: "Bending strength of large Japanese larch glued laminated timber"The 8th World Conference on Timber Engineering. (発表予定).