研究概要 |
繰り返し塑性変形に伴うせん断破壊の実験を実大鉄筋コンクリート柱に関して行った。断面の大きさは一辺500mmである。付着破壊が生じないように,片持ち梁形式で加力した。ピアノ線と変位計による測定システムを用いて,部材内部の変形状態を測定した。また,加力後に蛍光材入りの低粘性エポキシ樹脂を注入し,硬化後に試験体を切断して,内部ひび割れ状態を観察した。試験体表面とは大きく異なるひび割れ状況が観察された。 試験体は全部で8体作成した。ばらつきの影響を見るため,まったく同じ試験体を2体ずつ作成した。第一の実験パラメータは鉄筋量とした。すなわち,横補強筋が降伏する場合としない場合の二種類である。第二のパラメータは載荷履歴とした。すなわち,正負交番繰り返しと片側繰り返しの二種類である。横補強筋が降伏する試験体に片側繰り返しを与えた場合に実験結果に大きなばらつきが見られた。載荷履歴の影響は一見複雑であるが,部材の内部ひずみに着目することにより問題を単純化できたと考えている。曲げ降伏後の塑性変形によってひずみのモール円が拡大し剛性低下とせん断破壊につながるわけであるが,今後,実験データを解析することにより,モール円拡大が載荷履歴のどこで生じるのかを特定できれば,任意の載荷履歴に対する強度・剛性低下モデルを構築できるはずである。
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