研究概要 |
本研究は,CDCの指針に端を発した感染概念の変化に対応した医療・福祉施設の建築計画及び空調設備計画の再検討を目的としており,具体的には,医療・福祉施設の療養環境(病棟/療養棟)を対象として,以下の点を順次明らかにしてゆくことが課題である。 1)病室/療養室における飛沫感染の原因となる細菌の室内流動状況の把握 特に,季節変動など,実態の収録を行う 2)飛沫感染を防止するための空調システム,および建築計画の再検討 特に,結露の発生状況について,実態の収録を行う 3)我が国の空調設備基準(HEAS-02)などの再検討 結果は、以下の通りである。 1)アンケート調査の結果では,約3割の病院において病室の湿度設定が行われておらず,多くの病院が冷却減湿による除湿の際に,再熱を行っておらず,実質的に湿度は成り行きになっている。 2)さらに,FCU送水温度設定を7℃としている病院がほとんどであり,結露に伴う菌の発生・繁殖の可能性が懸念される結果も得ることができた。 3)病室の室内環境調査では,(1)病室の温湿度環境は,設計時の設定と実際の運用との間に格差がある,(2)AHUでの除湿が不十分であるとFCUで結露が生じる,(3)FCU吹出空気および病室の菌数が著しく増大する時期がある,(4)夏期にFCU内で繁殖した菌が,夏期明けの乾燥に伴って病室内に飛散することが示唆された,(5)中間期・冬期において,FCU稼働率が低下すると,稼動時に急激に粉塵および菌が吹き出す恐れがある。 4)湿度環境を適切に保つためにはドレンレスの環境を構築する必要があるが,シミュレーションの結果では,デシカント空調機のエネルギー特性は,再生空気に外気を用いる場合と還気を用いる場合で差があり,RA再生の方がエネルギー消費量を少なくすることができることがわかった。しかし,デシカント空調機のみでは室設定条件まで絶対湿度を下げられない時間がかなり存在するということも明らかになった。 5)夏期における空調方式の違いによる性能比較を行った結果では、デシカント方式にすることで冷却負荷は1/3にでき、従来型方式に比べて、デシカント方式で一次エネルギー消費量を15%削減でき、病室ドレンレス空調においてデシカント方式は有効であることが示された。
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