景観保全を考える伝統的町並みの街区の防災性能向上を目指す際には、建築基準法による個々の建築物のコントロールに頼るだけでなく、建物単体で十分な性能が確保できない場合には都市計画的対策で補い、逆に都市計画的対策で十分な性能が確保できない場合には建物レベルで補う、といったように互いに補完的に考えることで、地域の特性を活かし、より有効な対策を講じることができる。本研究においては、防火性能を建物単体だけで考えるのではなく、街区全体として捉えた面的な防災性能評価を目的とする。街区評価システムの代表的なものとして延焼シミュレーションがあるが、単一回実行の延焼シミュレーションによる評価の場合、その実行結果をどのように受け止め、対策につなげるかについて困難であった。そこで、本研究においては、リスクベースでの防災性能評価を行うこととしている。火災リスク評価では、街区単位だけでなく建物単位での評価も同一システム内で行え、ここで得られた建物単位の評価指標は、建物の性能だけでなく、街区内での建物の位置や周辺建物の状況などによって得られる街区の性能が及ぼす影響も反映された値となり、街区レベルで見た建物の性能を表すことが可能となっている。この評価法の有効性は、ケーススタディにおいて認められ、街区特性の抽出、並びに改善策に関しても効果が評価されることが確認された。
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