研究概要 |
放電法を用いてパルス通電による非晶質合金の結晶化現象をa-Cu_<50>Ti_<50>、a-Pd_<80>Si_<20>、a-Zr_<60>Cu_<30>Al_<10>について調べ以下の結果を得た。(1)室温域でのa-Cu_<50>Ti_<50>、a-Pd_<80>Si_<20>についての実験:パルス通電により結晶化が始まる初期電流密度i_d, c(10^9 A/m^2)を放電時定数τの関数としてτ=0.1〜10msの範囲にわたり調べ、i_d, cが2カ所で極小を示すこと、そのときのi_d, cとτは合金種により異なることを見いだした。(2)液体窒素温度(80K)域でのa-Cu_<50>Ti_<50>、a-Pd_<80>Si_<20>についての実験:パルス通電による結晶化が起きること、このときの通電中の最高到達温度はτが短い場合は150K以下であり、τ〜10msの場合でも室温以下であることなどを見いだした。また、i_d, cが2カ所で極小を示すこと、そのときのi_d, c,とτは同一合金種では室温実験での値と似ていることを見いだした。以上の結果は、パルス通電による結晶化過程には熱活性化過程は殆ど寄与していないことを意味しており、固体内励起場が実現していることを示唆する。また、τ=0.1〜10msの範囲で、i_d, cが2カ所で極小を示すことは、固体内励起場が複数の時定数で励起されることを意味しており、集団運動する原子数に階層性が有ることを示唆する。(3)X線回折と電子顕微鏡観察結果:a-Zr_<60>Cu_<30>Al_<10>では生成する結晶相が放電時定数τの関数であることをX線回折と電子顕微鏡観察により確かめた。また、生成する結晶の大きさはnm領域にあり、パルス通電では極めて微細な結晶粒が生成しているのを確認した。一方、a-Cu_<50>Ti_<50>を液体窒素温度(80K)域でパルス通電により結晶化させた試料では大きな結晶粒が生成していた。大変奇妙な現象であり、更に追究の予定である。
|