研究課題/領域番号 |
14350342
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
桑野 範之 九州大学, 先端科学技術共同研究センター, 教授 (50038022)
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研究分担者 |
波多 聰 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 助手 (60264107)
板倉 賢 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 助教授 (20203078)
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キーワード | 希土類磁石 / 透過型電子顕微鏡 / 表面処理 / 防食 / 磁気特性 / 亜鉛収着処理 / ネオジム磁石 / ボンド磁石 |
研究概要 |
電子機器の小型化・軽量化のニーズから高い磁気特性を有するNdFeB系ボンド磁石の開発が望まれており、その原料となる磁石粉末の性能向上を目指した微細組織制御法が盛んに研究されている。しかし、NdFeB磁石はキュリー温度が低く、耐食性も悪いという欠点がある。さらに、高温使用において減磁量が大きいという問題がある。本研究では、NdFeB磁石粉末の表面にZn収着処理を行い、耐食性と磁気特性の向上を図ることを目的とした. 本年度では、亜鉛収着による防食機構を明らかにするために、透過電子顕微鏡を用いて、微構造の詳細な解析を行った.NdFeB結晶粒が数百nmのHDDR磁石粉末では、350℃で3hrのZn収着処理を施すと、粉末表面に約1□m厚の表面被覆層が形成されており、さらに粉末表面から約4nmまでの領域にあるNd_2Fe_<14>B結晶粒界部に約40nm幅の粒界被覆層が均一に形成されていた.表面被覆層と粒界被覆層はいずれも10nm程度のFe_<11>Zn_<40>とNdZn_5微結晶粒が混在したものからできており、これが粉末表面やNd_2Fe_<14>B結晶粒界部の腐食を抑制し、耐食性を著しく向上させていると思われる。実際にZn収着HDDR磁石粉末に対して腐食実験を行った結果、微細組織にはほとんど変化が観察されず、高い耐食性を示すことが確認できた。このようにZn収着処理では、粒界に沿って粉末内部に進行していく腐食反応を極めて微量の粒界被覆層形成により効果的に防いでおり、これが磁気特性を低下させない要因である。 さらに微細な30〜100nm程度のNd_2Fe_<14>B粒からなる液体急冷MQPB磁石粉末に、同様な条件でZn収着処理を施しても、粉末表面に薄い表面被覆層が形成されるが、粒界被覆層は出現しなかった。このようなMQPB磁石の高温減磁はあまり改善されないことから、粒界被覆層が重要な役割演じることが明らかになった。
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