研究概要 |
NdFeB系磁石合金は、近年の電子機器および自動車工業において特に注目されている材料で,既に広く実用化されてきている。しかしながら、NdFeB磁石材料は耐食性に乏しいという欠点があり、それをどのように克服するかが重要である。本研究では、真空雰囲気内において亜鉛で被覆する(亜鉛収着)技術をさらに発展させるために,収着処理を施した材料での酸化過程を主に透過型電子顕微鏡で研究した。酸化処理後の微細構造は次のようになっていることが確かめられた。磁石合金粉末表面は酸化亜鉛(ZnO)層に覆われている。内部は、Nd_2Fe_<14>B結晶粒界にそって、ほとんどアモルファスに近い状態のネオジム酸化物(Nd_2O_3)と酸化亜鉛相の混合層が形成している。酸化処理後期になって、鉄粒の生成が認められるようになる。これに対して、亜鉛収着処理を施していない材料では激しく酸化腐食され,鉄(Fe)粒の形成が認められる.有磁性の鉄が発生すると、そこが新たな磁区の発生の元になり、残留磁化率の経年低下(減磁)の原因となることが考えられる.実際、亜鉛収着処理を施した材料では減磁率が低く,再着磁によりほとんど回復する。これらの改善は、亜鉛収着により形成された亜鉛表面層とNdFeB結晶粒界でのFe-Zn金属間化合物相により金属鉄相の生成が抑制されたことによることが今回初めて明らかになった. しかしながら、亜鉛収着処理は,長期にわたっての防食能力は余り大きくない。その原因は、表面の酸化亜鉛層があまり強固でないことと、酸化後期にはNdFeB粒界層での金属鉄の形成が抑えきれないことにある。これには、収着材料として亜鉛の他に第3元素を添加することによって、亜鉛酸化物、ネオジム酸化物をそれぞれ複合酸化物となるようにする手段が挙げられる。
|