研究概要 |
低温でイオン注入した化合物半導体GaSb表面に,特異な構造が形成される。無数の小さな穴が峰の巣のようにできる。穴の直径は500Å,深さ2500Å,穴を隔てる壁は50Å程度の厚さである。この現象は,材料科学的に新規性があるだけでなく,ナノテクノロジー分野での応用が期待できる。4つの具体的研究項目を設定し研究をすすめており,2003年度には以下の成果を得ている。 (1)形成機構モデルの検証:本研究者らは,峰の巣構造の形成はイオン注入によって導入される原子空孔と格子間原子の低温での挙動の違いによるものと考えている。注入時の基板温度,注入且依存性を調べ,これを検証した。 (2)蜂の巣構造の電子・光物性:極低温のフォトルミネッセンスを測定した。現在までのところ,新しい発光は観察されていない。これはおそらく注入によって結晶構造が破壊されアモルファス化しているためであろう。 (3)微細構造形成法への応用:.FIBでウェーハ上にあらかじめ初期構造を作製し,その後イオン注入をおこなって,規則的な峰の巣構造を作製することを試みた。まず,室温FIB加工によって表面に最近接距離160nmで窪みを稠密に配列した。その後,130Kで4×10^<14>ions/cm^2注入した。結果をFE-SEM, AFMで評価した。初期の規則正しい配列は崩されていなかったが,しかし,構造の成長までは確認できなかった。この理由はFIB加工の際のイオンドーズ量が大きいことにあると判断された。そこで低ドーズ量のFIB照射で初期構造を作製し,低温イオン注入しFE-SEMで評価を試みたが,観察中のコンタミネイションのため,初期構造を見失った。今後AFMのみで評価することによってこれを避ける。 (4)新物質の探索:これについては本年度は進展がないが,2004年度Geについて試みる予定である。
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