研究概要 |
われわれの提唱したモデルでは構造形成は点欠陥の移動に支配されている。ならば点欠陥の量と移動度を変えたとき,構造とその成長は変化するはずいである。そこで,注入量を変えることによって点欠陥量を変え,サンプル温度を変えることによって移動度を変え,構造およびその成長にどのように影響を与えるのか調べた。セル状構造の深さは注入量増加(すなわち点欠陥量の増加)とともに大きくなり,その形状は基板温度(点欠陥特に原子空孔の移動度)の変化により強く影響を受けている。注目すべき新しい知見として,セル状構造の初期構造がボイド形成であること,非晶質化とともにその深さ方向への急激な成長が生じることがあげられる。以上の実験結果より,形成モデルを改良した。 この自己組織化的挙動を,ナノファブリケイションに応用することを図った。形成するナノ構造に規則性を与えるために,次のような工程を考えた。まず,規則的初期構造を与え(トップダウン),それを成長させる(ボトムアップ)。実験室的手法としてFIBを利用した工程を考えた。FIB照射によってまずボイドを規則的に配列する。その後温度を制御したイオン照射によって構造を発達させる。3通りの試みを行った。最初の例は初期構造の配列を一定間隔にして,ドーズ量を変えたものである。次の例は,ドーズ量一定にして,間隔を変えたものである。以上は,初期構造作製,構造の発達,いずれの工程も室温で行っている。最後の例は室温で初期構造をつくり,それを低温で発達させたものである。これらの試行より以下の結論を得た。 (1)間隔100nm以上の規則的セル構造が形成できる。 (2)30kVGa^+を使って初期構造をつくる場合,1スポットあたりのイオン量は10^5イオン以上が必要である。 (3)2次構造の形成により,規則構造が壊される。 (4)基板温度は重要なパラメータである。
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