研究概要 |
この研究の遂行によって得られた成果のその要点は次の通りである。 (1)表面欠陥構造の照射量および基板温度依存性より,注入により導入されたフレンケル対の一部が再結合せず,表面欠陥構造を形成することを半定量的に明らかにした。 (2)形成されたままのセル状構造は,非晶質である。フォトルミネッセンス測定を行った限りでは,この構造に特別な発光はみられない。 (3)集束イオンビームを利用して,この現象を利用した新しい微細構造形成法が有望であることを実証した。 (4)ほぼ全ての元素半導体およびIII-V化合物半導体を探索し,GaSb,InSb,Geでセル状構造あるいはスポンジ状構造が形成されることを明らかにした。 (5)その他,セル状構造のイオン注入方位依存性,ZnOに関する異常挙動が検出された。 なによりも貴重な成果は,基礎的な面と応用面にわたって今後にいくつかの新課、題を生み出したことである。そのひとつとして,これからの半導体点欠陥の研究に新しい手法を提供したことがある。これまで半導体,特に化合物半導体中の点欠陥についての確実な知見は乏しかった。しかし,セル状構造という見ることのできる構造の形成・成長を利用することによって,点欠陥の形成エネルギーや移動エネルギーなどの評価が可能になった。応用面においては,ナノ構造の作製が可能であることが示され,今後実際のデバイスの実現が課題となった。磁気デバイスとして垂直磁気記録デバイス,電子・光分野で発光デバイスの実現からレーザーへの展望が開けてきた。
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