研究概要 |
本研究は、耐火金属等の液体状態の熱物性値(密度、熱膨張率、比熱、表面張力及び粘性係数)を静電浮遊法による無容器プロセッシングで計測するものである。研究対象とする耐火金属は2,000℃以上の融点を持ちかつ液体状態では化学的活性に富むため、坩堝を用いた従来の測定法では測定が困難である上、不純物の混入が避けられないことからデータの信頼性が低い。無容器プロセッシングを用いればこれらの問題が解決される上、融点以下の過冷却状態の物性値も測定することが可能となる。無容器プロセッシングを具現化する方法としては、他にガス・音波・磁場・電磁等がある。本研究で採用する静電浮遊法は技術的に最も困難であるが、浮遊によって試料に与えられる擾乱が最も少なく物性測定に最適な方法である。 本研究では、これまでに開発していた静電浮遊炉に回転制御機構を付加し、浮遊試料の回転を制御することによりより高精度に熱物性値を測定することを可能にした。本年度は、ハフニウム(融点2504K)及びロジウム(融点2336K)の熱物性値の計測に成功した。また、これまでに計測したチタン、ジルコニウム、ニオブ及びハフニウムのデータと剛体球モデルによる理論計算とを比較したところ結果は良く一致した。これは、採用したモデルの妥当性と測定データの信頼性の高さを示すものと理解される。モリブデン、タンタル及びレニウムについては直径1mm以下の試料において浮遊溶融に成功したが、加熱レーザーの出力限界により熱物性測定に必要な直径2mmの溶融には至っていない。今年度末に新たに高出力の加熱レーザーを設置し、来年度これらの試料の熱物性測定に再挑戦する予定である。
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