研究概要 |
原子層レベルの薄膜作製技術によって創り出される人工超格子は、自然界に存在しない結晶を人工的に作製することで、これまでより優れた機能や特性、さらには新たな機能の発現の可能性を秘めている。本研究では110MHzまでの高周波領域における複素アドミッタンス測定システムを構築し、BaTiO_3/SrTiO_3系人工超格子のより正確な誘電特性を明らかにした。BaTiO_3/SrTiO_3系人工超格子はMBE法により作製した。BaTiO_3層とSrTiO_3層の積層周期を1,10,20,40と変えて作製し、全体の膜厚は80単位格子に固定した。成膜中のRHEED強度振動観察、成膜後のXRD測定で、超格子構造の形成を確認した。薄膜上に交差指間隔が5μmの電極を作製し、インピーダンスアナライザーで複素アドミッタンスの周波数依存性(5MHz-110MHz)を四端子対法で測定した。さらに、電磁界解析ソフトを用いてのフィッティングから人工超格子の誘電率を算出した。薄膜上に電極幅・電極間隔を変えて交差指電極を形成したモデルを作製し、電磁界シミュレーションを行った。薄膜の誘電率に対する規格化したキャパシタンスは、電磁界解析ソフトでは電極幅・電極間隔により変化しているが、従来までの理論では一定となった。これは試料が極めて薄く、誘電率が大きいためであり、こうしたモデルの評価には電磁界解析が必要であることが確認された。この手法を用いて、測定したアドミッタンスのフィッティングを行った。その結果、10単位格子ずつ交互に積層した人工超格子は他の周期の試料より大きな誘電率(比誘電率で33000)を示し、110MHzまでほぼ一定であることが明らかになった。
|