研究概要 |
ナノサイズシリカ微粒子を,直径約2cmのペレット状に成型し,そのペレットを大気中1,000℃程度の比較的低温で焼結することにより,ポーラスシリカを得る実験を行った。このように,シリカガラスのガラス転移温度(約1,200℃)以下で加熱を行うことにより,出発物質であるシリカ微粒子の表面欠陥構造を保持したまま,固相反応のみによる焼結を達成することができると予想される。これまでの実験より,1,000℃数10時間の加熱で反応が進行しポーラスシリカが得られることが明らかとなった。さらに,100時間以上の加熱では,ほぼ透明なバルク体(600nmでの透過率80%)が得られることが明らかとなった。得られた,バルクシリカガラスの密度は,通常のシリカガラスの密度とほぼ等しく,マクロな多孔は消失していることが示された。また,この透明シリカガラス中の水分量を定量したところ,400ppm程度となり,出発物質であるナノサイズシリカ微粒表面の吸着水,および水酸基は大部分焼結過程で失われていることがわかった。このように,大気中1,000℃程度の比較的低温での焼結により,透明なシリカガラスが得られた報告は今までになく,「透明シリカガラス発光材料およびその製造方法」として特許出願を行った。今回試料作製に用いた焼結温度は1,000℃とシリカの焼結温度としては低いため,固相反応の際に粒子界面での原子移動が十分に行われていない可能性がある。そこで,得られた透明シリカガラスのField-Emission(FE)SEM観察を行った。その結果,得られた試料は粒径のそろった微粒子の集合体であり,焼結後も,もとのシリカ微粒子の形状を残した微細構造を有していることがわかった。
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