複合材料強化用p-アラミド繊維の超臨界流体を用いた新規表面処理法

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14350361
• 研究機関: 湘南工科大学
• 研究代表者: 幾田 信生 湘南工科大学, 工学部, 教授 (30277941)
• 研究分担者: 濱田 州博 信州大学, 繊維学部, 教授 (30208582) ; 森井 亨 湘南工科大学, 工学部, 助教授 (50230090)
• キーワード: パラ系アラミド繊維 / 一方向繊維複合材料 / 界面強化 / シランカップリング剤 / フィルムフォーマ / 超臨界流体 / 結晶間間隙 / 浸透・架橋

研究概要

アラミド繊維類は複合材料化においてマトリックス樹脂との界面接着性が乏しい。このために、高性能複合材料としての活用は未だに低い。
本研究では、とくに、ポリパラフェニレンフタルアミド(PPTA)繊維を取り上げ、その特異的な結晶性を利用して従来と全く異なる新規方法による界面強化を図り、その界面強化機構を学術的に明らかにすることを目的にした。
本研究では、先行研究並びに昨年度の成果をもとに、次の2段階手順で繊維の処理を行った。第1に、PPTAの結晶間間隙を広げた状態で低分子を挿入させる(インターカレーション的技法)。この広がった結晶間間隙を加熱によって狭くさせて、繊維からの低分子拡散を防いだ。より固着性を高めるために、加熱時に浸透した低分子同士が架橋によって結晶間隙内で高分子化させた(ネットワーク形成技術)。これらの技法を活かして、処理剤組成としてガラス繊維用処理剤として知られるシラン剤とフィルムフォーマの組合せを用いれば良好な界面強化を示すことが分かった。
今年度ではこれらの処理剤の浸透及び加熱に伴う処理剤の高分子化に関する基礎的知見も得た。始めに、TMAによって最適な処理混合剤の加熱に伴う変化を分析した。その結果、シラン剤とフィルムフオーマの組み合わせでは粘弾性を向上させ、架橋による高分子化が確かめられた。浸透性についてはFTIR-ATR法によって繊維に浸透した処理剤の検討を行なった。その結果、シラン剤及びフィルムフォーマも処理後には繊維内部に存在することが分かった。処理剤の浸透は界面強度及び一方向繊維強化複合材料の曲げ強度を増加させた。繊維複合材料の引張試験から処理繊維では繊維のフィブリル化を著しく抑制することが分かった。
以上の結果から、本処理方法は従前のPPTA複合材料特性を改善することが確かめられた。

研究成果

• [文献書誌] Nobuo Ikuta: "Functions of Silane Coupling Agents for Nano-Assembly at Materials Interfaces"Proceedings of the 8th Japan International SAMPE Symposium. 2. 701-704 (2003)
• [文献書誌] Akihiro Ohnishi: "Effect of Surface Treatment on Mecanical Properties of p-Aramid Fiber Reinforced Composite Materials"Proceedings of the 8th Japan International SAMPE Symposium. 1. 745-748 (2003)
• [文献書誌] 幾田信生: "シランカップリング剤の反応/作用機構"マテリアルステージ. 3. 1-5 (2003)
• [文献書誌] 幾田信生: "界面接着性の向上を目指したケブラー^<【○!R】>繊維の新規表面処理法"日本学術振興会繊維・高分子機能加工第120委員会年次報告. 54. 13-16 (2003)
• [文献書誌] T.Morii: "Environmental exposure of glass woven fabric/vinylester composites"Proceedings of the 8th Japan International SAMPE Symposium. 455-458 (2003)
• [文献書誌] T.Morii: "Experimental evaluation of hydrothermally aged fiber reinforced plastics, Expanded Horizon in Advanced Materials and Processing"Proceedings of the 8th Japan International SAMPE Symposium. 2. 489-492 (2003)
• [文献書誌] Kunihiro Hamada: "Xiang-Rong Wang : "Sorption of an Acid Dye by a Silk Fiber in the Presence of Bolaform Electrolytes Containing Pyridine Rings""Coloration Technology. 119・6. 331-335 (2003)
• [文献書誌] Kunihiro Hamada: "Application of Bolaform Electrolytes as Auxiliaries for Acid Dyeing of Wool"Proceedings of the International Conference of Dyeing and Finishing. 73-75 (2003)
• [文献書誌] Kunihiro Hamada: "Control of dye sorption for wool fiber using bolaform electrolytes"Proceedings of SAMPE Japan. 693-696 (2003)
• [文献書誌] Kunihiro Hamada: "Control of the Binding and Sorption using Bolaform Electrolytes"Current Trends in Polymer Science. 7. 1-21 (2003)