研究概要 |
超高圧による新水素化物の探索は化合物合成に圧力という第3のパラメータを加え、常圧合成では見られない特異な構造や組成を有する化合物の発見を可能にしている。研究代表者らは超高圧法による新水素化物探索に着手して3年の間に、5つ以上の新水素化物を立て続けに発見し、GPaオーダー超高圧法がもたらす新物質合成に大いに期待される。そこで本研究は多面体アンビル式装置を用いて、GPaオーダーの超高水素圧下でMg、Ca等のアルカリ土類金属や希土類金属とTi, V, Ni, Mn等の遷移金属系を対象とし、5mass%以上の水素を有する新規の水素化物の合成を試みることを目的とした。その結果、Mg-TM-Hとして、TM=Ti, Vでは新規相は合成されなかったが、Mnにおいてはこれまでに、2GPa下で六方晶系のMg_3ReH_7構造(空間群P6_3/mmc, Z=2,a=4.7099,c=10.2861Å)を有するMg_3MnH_7が報告されている。そこで、本研究では報告されている合成圧力以上での合成を試みた。その結果、この水素化物と同組成において、4GPa以上でその水素化物とは異なる結晶構造を有する新規水素化物が合成された。その結晶構造は単純単斜のブラベー格子に属すことがわかった。その格子定数はa=0.8819(8)nm、b=0.4658(4)nm、c=0.4678(5)nm、β=105.6(1)°と算出された。この水素化物相は2GPaで合成した相よりも約50K低い、620K付近で吸熱を伴う水素解離が生じ、MgとMnに分解することが判明した。また、この水素化物は4.2mass%の水素を含有していることが明らかになった。 以上のように、目標値の5mass%への十分な手応えを得られる結果を得た。
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