研究課題/領域番号 |
14350365
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井口 泰孝 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90005413)
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研究分担者 |
成島 尚之 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20198394)
大内 千秋 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00312603)
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キーワード | 生体材料 / ステンレス鋼 / 回転曲げ疲労試験 / イオン溶出 / ハンクス溶液 / 乳酸溶液 / 磨耗紛 / 擦過腐食 |
研究概要 |
ステンレス鋼製生体刺激電極の回転曲げ疲労試験を310K、擬似体液であるHanks溶液中および1%乳酸溶液中で行い、疲労強度、疲労試験中のイオン溶出挙動および摩耗紛発生に関して以下の結果を得た。 1.生体刺激用電極材料として開発されたFe-22Cr-10-Ni-6Mo-0.4Nオーステナイト系ステンレス鋼は、低曲げ応力領域において従来材であるSUS316Lよりも優れた疲労強度を示した。この優れた疲労特性は主に窒素添加の効果と考察した。 2.1%乳酸溶液中においてはHanks溶液中よりも顕著な摩耗腐食に伴う擦過痕が観察された。 3.1%乳酸溶液中における金属イオン溶出は、疲労試験時間に比例して増加した。これは、電極素線同士の摩擦によって電極表面における不動体皮膜の形成が阻害されるためと考えられた。いずれのステンレス鋼を用いた場合にも、溶出イオン濃度は、ステンレス鋼組成とほぼ一致した。一方、Hanks溶液中では、疲労試験時間に関係なくイオン溶出は低濃度に抑制された。また、検出されるイオン濃度は、Ni>Cr>Feとなることを明らかにした。 4.疲労試験後にHanks溶液中における摩耗紛として、棒状のβ-FeOOH、および粒子状のα-FeOOHやγ-FeOOHの存在が確認された。β-FeOOHは塩素イオン存在下における腐食生成物との報告があり、Hanks溶液は塩素を含有することから従来の報告と一致する結果であった。β-FeOOH中にはCrが固溶していることがEDX分析からわかり、β-(FeCr)OOH形成がHanks溶液中における低いFeおよびCrイオン濃度の原因と考えられた。 現在は、生体刺激電極の疲労特性に及ぼす活性酸素種H_2O_2の影響を明らかにするために、Hanks溶液+(100-1000mMH_2O_2)における回転曲げ疲労試験を行っている。
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