研究課題
本研究は、フェムト秒レーザーによる加工プロセスの時間発展のダイナミクスがどのようなものか、また、現在の一般的なシナリオがどの程度まで成立するのか、他に考慮すべき要素がないかなどについて、サブピコ秒の時間分解能を持つ直接的イメージング法によって、検証しようとするものである。加工用レーザーパルスと照明用レーザーパルスは、同一レーザーパルスを分割し一方を波長変換することによって発生させる。2つのパルスの強度を独立に、特に、カメラの照明用パルスの強度を広範囲に調整する必要があることが判明し、それぞれの光路中にアテネーターを設け、試料への到達エネルギーを調整するようにした。これにより鮮明な画像を得ることができるようになった。フェムト秒レーザーの基本波パルスを、平板状の試料表面に対して垂直に集光照射し、照明用レーザーである2倍波を、ビーム径を拡大し表面に平行に平行光として通過させ、シャドウグラフイメージを測定した。パルス照射後から9ナノ秒までの間の時間分解画像を得ることができた。2倍波の透過フィルターを用いることで、プラズマ発光の影響を受けずに、レーザー加工に伴うプルームの発生と進展を高時間分解能で捉えられた。照射パルス数を増加させると、同一時刻でもプルームのフロントの位置が試料表面に近づくことを明らかにした。これは、照射部に加工穴が生じ、その底部でレーザー光が吸収され、プルームが発生するという考えで説明可能である。さらにこの様な結果から、各種材料のパルスあたりの加工量の評価が可能になった。それによると、レーザー波長における吸収係数が最も低いガラスが、最も加工量が大きく、逆に金属では加工量が小さい、という結果が得られた。これは、これまでのレーザー加工の常識とは異なる傾向であり、フェムト秒レーザー加工プロセスに関する、重要な知見であると考えている。
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