研究概要 |
真空中の平行平板状電極間(直流高電圧印加)において,数十nmサイズの炭素超微粒子とSi超粒子との混合超微粒子を静電的に高速衝撃・付着させることによる新しい薄膜形成法を用いて,ダイヤモンド状炭素(DLC)とSiの混合組織薄膜を形成させた。今年度は,膜形成領域への微量水素ガスの導入と磁界あるいは高周波電界の重畳とによる水素プラズマエッチング作用を付加し,混合組織薄膜の機能性及び成長効率の向上を図った。形成膜のSi/C含有率と原料粒子混合率の関係をXPS分析により調べ,また,その機能性をホッピング電導特性(抵抗率,局在準位密度)から評価した。 本年度の研究において次の知見を得た。1)混合膜のSi含有率は原料のSi超微粒子の混合率に比例する。2)混合膜の成長速度は,、直流電界に磁界のみを重畳した場合(MS)及び磁界と高周波電界とを重畳した場合(RF-MS),直流電界だけの場合に比べていずれも増加するが,高周波電界を併用すると少し減少する。これらの結果は,水素プラズマの作用である表面清浄化による粒子付着効率の向上と,エッチングによる材料除去が膜成長過程に関与したことを示唆する。3)混合膜のホッピング電導特性は,プラズマエッチング作用が強くなる順(MS<RF-MS)に抵抗率とその温度係数が高くなる。これはダングリングボンドが減少して局在準位密度が低下したことを示しており,水素プラズマの膜成長過程に及ぼす水素プラズマの作用に関する知見と符合する。 以上のように,水素プラズマの効果によって膜質及び膜成長効率を向上させることができたが,電導特性におけるSi/C界面効果の発現は認められなかった。
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