研究概要 |
定電流電解によるZn上へのポリ2-ビニルピリジン膜の作製を試み,膜の構造,耐食性に及ぼす電流密度の影響を調査した。可逆電位掃引方式および定電位方式でも重合膜を作製し,定電流電解法にて作製した膜と比較した。定電流電解により形成された膜の厚さは,通電量に比例して増加したが,電流密度が高くなると,水素発生量が多くなるため減少した。皮膜のFT-IRスペクトルを調べたところ200,500A/m^2で形成させた重合膜では,波数1100cm^<-1>付近に吸収ピークが認められるが,電流密度が低下するに従い,このピークの波数は高い方にずれた。波数1100cm^<-1>付近にはピリジンの環振動のピークが現れることが報告されており,ポリ2-ビニルピリジンの構造は,電流密度の増加に伴い,非枝分かれ構造から枝分かれ構造に変化することが推察された。3%NaCl溶液中でのZn溶解のアノード電流密度は,ポリ2-ビニルピリジン膜を被覆させることにより大幅に減少した。通電量の増加に伴い重合膜の膜厚が厚くなるため,耐食性は通電量が多くなるほど改善された。電解重合の電流密度が50A/m^2の時,アノード反応は最も抑制されており最も良好な耐食性を示した。電流密度が50A/m^2より低くなると非枝分かれ構造となるため耐食性の改善が小さいと考えられる。逆に電流密度が50A/m^2を越えて高くなると水素発生の割合が多くなり,皮膜の厚さが薄くなるため,耐食性の改善は低下した。皮膜の厚さ,構造に及ぼす通電方法の影響はなかったが,定電流電解により作製した皮膜が最もクラックが少なく,最も耐食性を改善した。
|