研究概要 |
本年度は,硫酸塩,スルファミン酸塩および塩化物浴を用いて,主として電析挙動を調べた。種々の電解因子を変更させ,電析Fe-Ni合金の電流効率および合金組成を測定した結果,より卑なFeが優先析出する異常型共析が,硫酸塩およびスルファミン酸塩浴において,広い電解条件で顕著に認められた。一方,塩化物浴では,異常型共析領域は存在はするもののその領域も狭く,またFeの優先析出の程度は小さいことがわかった。 次に,上記三種類の浴を用いて,定電流密度下で合金析出の分極曲線およびFe, Ni単独析出の分極曲線を測定した。この結果,Fe-Ni合金析出の異常型現象は,Niの高電流密度下での分極現象および低電流密度下でのFeの復極現象の結果起こっていることがわかった。典型的な異常型共析を示す鉄族金属-Zn合金電析においては,鉄族金属の大きな分極現象によりZnの優先析出が起こっているので,鉄族金属一Zn合金系で異常型共析機構の通説とされている水酸化物抑制説が本Fe-Ni系でも適用できるかさらになる検討が必要である。 電析物の表面は,低電流密度域で得られた電析物の場合,上記三種類のいずれの浴を用いても鏡面上の良好な外観を呈したが,高電流密度域では硫酸塩からの電析物が最も良好であった。 一方,張力センサ作成のために,直径0.1mmのCu線上への電析を試みた。なお,電析皮膜の厚さは1mmを目指した。その結果,従来の実験条件および装置を若干改良することで,目的の組成の皮膜を得ることが可能となった。
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