研究課題
基盤研究(B)
本研究は、固体廃棄物など有機物質の酸化(燃焼)反応に伴うダイオキシン類生成反応の詳細なメカニズムを明らかにすることにより、ダイオキシン類生成を効率的に抑制するための技術原理を提示することを目的としている。従来の基礎的研究および実プロセスにおけるダイオキシン類の挙動に関する研究では、燃焼排ガスの冷却過程で析出する未燃炭素粒子からの生成寄与が大きいことが指摘されており、詳細反応の把握と反応速度の定量化が望まれてきた。まず、マクロ構造を有する未燃炭素粒子「すす」を起源とするde novo合成反応によるダイオキシン類の生成ついて、金属化合物、塩素化合物を様々に複合化して調製した炭素試料を使用した実験および結果の考察を行った。これらの試料を用い、種々の条件下で炭素酸化、有機塩素化合物生成、ダイオキシン類生成などの反応速度をそれぞれ測定し、共存物質、混合条件、温度、雰囲気など、実験条件の影響の定量把握を試みた。また、反応途中および終了後に試料に含有する微量成分の分析、実プロセスから採取した飛灰試料の分析を行い、炭素、金属化合物、塩素化合物の複合化状態を評価した。さらに、ガス相中の微量アンモニア、二酸化硫黄、および固体試料に添加した尿素がダイオキシン類生成速度を大幅に低下させることを確認した。特に、尿素添加によってガス側に排出されるダイオキシン類量が1/10程度以下に低減する結果を得た。尿素添加試料の酸化反応に伴って発生する有機化合物について詳細な分析を行った結果、アミノ基やシアノ基を有する炭化水素やピリジンなど環構造中に窒素を含む有機化合物が検出された。これらは尿素の熱反応により生成した活性な窒素および窒素化合物による官能基置換や炭素構造中への窒素の組込み反応に起因することを考察し、その効果を検証した。
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