研究概要 |
溶融金属清浄度のオンラインモニタリングへの集束超音波法の適用について理論的,実験的に検討した.得られた主な結果は以下のとおりである. (1)音響レンズを用いた溶融金属中での弾性波の集束性を検討するために,波動伝播シミュレーションを行った.差分法を用いた二次元モデル解析により,溶融アルミニウムおよび溶融マグネシウム中において弾性波が回折限界まで良好に集束することが示された.さらに,焦点領域近傍に存在する微小介在物からのスキャッタリングについて調査したところ,半波長の大きさの粒子でさえも,明瞭なパルスエコーを反すであろうことがシミュレーションにより示された.また,エコーは粒子の凝集状態にも依存することが明らかになった. (2)マルテンサイト系ステンレス鋼をベースとした集束超音波センサーを設計・製作し,その波動伝播性能を調べたところ,その優れた導波性能が確認された.このセンサーのマグネシウム溶湯中での耐食性,安定性を検証するために700℃の溶湯中での実験を行った.その結果,8時間の連続計測には耐え得ることが確認されたが,32時間ではセンサーとマグネシウムとはわずかに反応することが明らかになった. (3)超音波パルスエコー計測・解析システムを汎用グラフィカルソフトウェアLabVIEWを用いて構築した.これにより30Waves/secのリアルタイム計測が可能となった. (4)集束超音波センサーの粒子検出性能を実証するために,700℃の溶融アルミニウム中でのアルミナ粒子検出実験を行った.平均粒径160ミクロンのアルミナ粒子からの明瞭なパルスエコー計測に成功した. 以上のように,本年度の研究により,開発した集束超音波センサーの有用性が確認された.
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