研究概要 |
太陽光発電用一方向凝固多結晶シリコンの発電効率と生産性を高めるために、シリコンの柱状晶成長機構について研究した.まず,内径20mm,高さ100mmの小型試料を用い,Bridgman型炉により温度勾配20K/cm,凝固速度0.075〜9.6mm/minで99.9999%のSi結晶を一方向凝固させ,核生成及び結晶成長の過冷度,結晶粒径,柱状晶の結晶方位を調査した.結晶は約1mm/minまでの低速凝固では熱流方向に柱状成長し,成長速度の増加とともに粒径が小さくなった.しかし,凝固速度が約1.2mm/min以上になると等軸晶へ遷移した.試料底部および中心部に設置した熱電対により,核生成および結晶成長の過冷度を調査した結果,いずれの過冷度も凝固速度の上昇とともに大きくなるが,全ての凝固速度において核生成過冷度が成長過冷度より大きい.また,結晶成長に伴う結晶方位の変化をEBSPにより解析したところ,いずれの速度においても,試料底部では様々な方位で結晶成長していたが,試料上部では大部分の結晶が<111>方向に近い方位で成長しており,結晶同士の競争成長が働いたことを示している. 次に,太陽電池に使用されている400×400×200mmの一方向凝固大型シリコンインゴツトの結晶方位についてEBSPを用いて解析したところ,小型試料と同様に結晶成長の進行とともに<111>、<115>、<112>、<103>方向に成長する結晶が大部分を占めるようになる.凝固条件によって試料底部近傍から粗大な結晶が成長し,小型試料とは異なる成長挙動となったため,本補助金で作製した真空溶解用黒鉛抵抗炉を用いて直径85mmの試料を作製したところ,大型インゴットと同様の大きな結晶粒組織が得られた.本装置は初期凝固の核生成・成長挙動の実験及び解析研究を行う上で有効な試験炉である.
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