研究概要 |
太陽光発電用一方向凝固多結晶シリコンの発電効率と生産性を高めるために、シリコンの柱状晶成長機構について研究した.まず,小型試料(内径20mm,高さ100mm)を用い,Bridgman型炉により温度勾配20K/cm,凝固速度0.075〜9.6mm/minで11Nの高純度シリコン結晶を一方向凝固させ,核生成及び結晶成長に要する過冷度,結晶粒径,柱状晶の結晶方位等を調査した. 結晶は約1mm/minまでの低速凝固では熱流方向へ柱状に成長し,低速度ほど組織が粗大化した.しかし成長速度の増加と共に結晶粒径は小さくなり,凝固速度が約1.8mm/min以上になると等軸晶へ遷移した. いずれの速度においても結晶粒内にはΣ3双晶(双晶面{111})が熱流方向に平行に分布していた。そこで,双晶が成長中の結晶粗大化に寄与すると考え,ファセット成長における2次元核生成理論を用いて解析したところ,双晶を有する<211>方向の成長過冷度は<111>方向成長の場合の約70%まで減少し,有利に成長できる結果が得られた.また分子動力学によっても同様の結果を得ることができ,双晶と固液界面で構成するキンクがステップ成長を助長することが明らかとなった。 初期凝固で成長する結晶はルツボ底面の形状によらず底面と平行方向に<110>〜<211>の間の方位で成長していた.同様の現象は中型試料(内径80mm,高さ20mm),および太陽電池用大型インゴットでも認めた.以上の結果より,凝固速度を制御し,双晶を利用して<110>〜<211>方向へ成長する結晶で試料底部を覆い,その方位を保ってインゴット上部へ結晶成長させることにより粗大な多結晶シリコンを育成できることを明らかにした。
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