Ni基超合金の凝固組織に対する重力の影響の検討を、主に上下2方向での一方向凝固法を用いて行った。これには、昨年度に熱源を特注のSiCヒータに改善した一方向凝固炉を用いた。ただし、この炉ではこれまでに計画した噴霧焼入れができないため、水中への落下による焼入れとなり、液相内での対流パターンの現出は不可能であった。しかし、昨年度には上下方向からの一方向凝固実験により、フレッケル欠陥の作成に成功しており、今年度もフレッケル欠陥の生成に対する重力の影響を再確認することができた。フレッケル欠陥は管壁に生じており、鋳型内の熱伝達と凝固組織、すなわち、デンドライト中での重金属の拡散が制限された結果としてフレッケルが生じたものと考えた。 Cu-Pb偏晶合金系では液相に2相(L1相とL2相)分離が存在し、一般的にはこれらの液相と固相との相性(界面エネルギー)が凝固組織を決めている、と考えられている。しかし、L1相とL2相では密度が大きく異なるので、凝固組織に対する重力の影響が考えられる。そこで、本年はこれら合金系でも上下方向からの一方向凝固実験により、凝固組織に対する重力の影響を検討したが、溶解中で2相分離が生じ、実験に失敗した。ただし、凝固組織に対するアルミニウムの合金元素としての影響であることを明らかにした。すなわち、アルミニウム添加による脱酸ではなく、この原因は、アルミニウム添加による銅への鉛の溶解度の相違であることを突き止めた。
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