研究概要 |
熱力学的に不安定な第二相粒子を含む複合溶射材料を用いて溶射すると,成膜過程における第二相粒子の分解が懸念される.しかしながら反応性溶射では,インプロセス反応によって安定化合物を生成するため,複合皮膜の形成に極めて有望と考えられる.当該「反応性溶射」研究において2003年度に得られた主な成果は,以下の2項目に分類される: (1)Al合金の表面被覆として固体潤滑剤の黒鉛を含む鋳鉄皮膜に注目し,前焼鈍した黒鉛を含む鋳鉄粉末を用いてプラズマ溶射溶射を行った.黒鉛の生成・消滅挙動などを検討した結果,前焼鈍で生じた黒鉛は,黒鉛の溶銑への再溶融によって溶射過程で減少し,皮膜中では黒鉛が大幅に減少する.しかしながら,高速・低温フレームを特徴とするHVOF溶射では,前焼鈍した溶射材料中の黒鉛量は,溶射過程を経た皮膜でも余り減少しない. (2)反応性溶射には不適であるHVOF溶射においてインプロセス反応を生じさせるため,発熱反応を伴うSiO_2/Ni/Al-Si-Mg合金系の造粒粉末を開発した.この複合系において生成する安定化合物はMgAl_2O_4とNiAl_3が予想される.当該反応は溶滴の飛行中ではなく,基材上で進行することが判明した.同じ粉末を用いて,高温・低速フレームを特徴とするDCプラズマ溶射を行った結果,インプロセス反応はHVOF溶射よりも著しく進行し,皮膜硬さも大幅に向上する.
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