研究概要 |
PHSを含む携帯電話に内蔵されている電子機器には銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)等の貴金属・白金属が使用されている。現在、年間3,000トンを越える多量の携帯電話が廃棄されており、1トンあたりに含まれる貴・白金属は、Ag 2kg, Au 0.28kg, Pd 0.14kg,銅(Cu) 140kg,鉄、アルミ分である。金鉱石に含まれているAuの量が0.005〜0.030kg/トンを考えると、電子機器から可能な限り有価な資源を分離・回収することは、地球環境保全にみならず再資源化につながる。 Ag, Au, Pdを分離・回収する現行プロセスは、その工程が複雑であり、その上、処理に伴う薬品添加量及び二次廃棄物量が極めて多いのが現状である。 本申請の研究では、この様な問題点を解決するいち手段として、タンニンゲル/液抽出プロセスを新規に提案し、本プロセスの性能に着いて検討した。初年度(平成14年度)は、タンニンゲルの構造設計方法を確立し、Agのタンニンゲルへの吸着容量が940mg-Ag/g-dry-tannin gelと極めて高い高性能分離剤の開発に成功した。平成15年度は、AuとPdのタンニンゲルへの吸着能及びAuとPdの分離・回収システムを対象とし、次の様な新しい知見を得るに至った。 (1)金イオン及びその錯体が存在する溶液の液組成を制御して、初期pH=2、初期PCl=2に設定すると、Auのタンニンゲルへの最大吸着容量は8000mg-Au/g-dry-tannin gelと、他の分離剤に比べて驚異的な吸着能を示した。 (2)パラジウムイオン及びその錯体が存在する溶液の液組成を制御して、初期pH=2、初期Cl濃度を0.002Mとすると、Pdのタンニンゲルへの最大吸着容量は200mg-Pd/g-dry-tannin gelと高い値を示した。ところが、初期Cl濃度のみを0.1Mに設定するとPdのタンニンゲルへの吸着容量は極めて小さいことが明らかとなった。 (3)(1)と(2)結果を基に、Au(0.51mM)-d(0.51nM)混合溶液から、AuとPdを分離するシステムの操作条件を探索した。その結果、初期pH=1、初期PCl=1、イオン強度0.1の液組成において、Auが選択的に吸着分離され、その分離係数が2.1×10^5と極めて高い分離システムの構成に成功した。
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