研究概要 |
レーザーの工業的用途の拡大を図る上で,高出力化および高効率化は必要不可欠となる。従来のレーザーの励起エネルギーは電力のみに依存しているため,一般にエネルギー効率の極めて低いレーザーでは,高出力化に伴い消費電力が飛躍的に増大することは避けられず,励起媒体の化学的安定性,省エネルギーさらには電力設備の制約の観点からも必然的にレーザー出力に限界が生じることになる.本研究では,多孔体バーナーを用いて1200K以上に予熱された超高温空気とメタンなどの炭化水素系気体燃料との燃焼場に,マイクロ波を印加した場合の燃焼ガス分子のエネルギー励起状態を明らかにするとともに,新型の高出力,高効率レーザー発振実現のための基礎的研究を行う.超高温空気燃焼は,可燃範囲が著しく増大するだけでなく,フレームレスで高効率かつ低NOx燃焼が行われる.このようなフレームレス燃焼は,明確な火炎面を有さず,比較的広い空間内で酸化反応が進行し,活性化学種も広範囲に分布しているものと予想される.これにマイクロ波を照射することにより,自由電子ならびに活性化学種が有効に励起され,レーザー発振の必要条件となる反転分布が達成されるものと考えられる.ここでは,このような励起に伴うエネルギー準位間の遷移状態を分光学的に計測し,レーザー発振に最適な遷移を模索するとともに,反転分布に伴う微少利得(ゲイン)に与える燃焼条件,マイクロ波励起方式の影響を明らかにしつつ,全く新しいタイプのレーザー発振の実証実験を行うことを目的とする.本年度は,2段燃焼を利用した高温空気燃焼,ブンゼン式バーナー燃焼,対向噴流式燃焼などの種々の燃焼場にマイクロ波を照射した場合のゲイン計測を実施し,条件によっては反転分布が実現されることを明らかにした.また,これら燃焼場のFT-IRによるスペクトル計測から,ガス輻射波長領域以外でもマイクロ波照射により透過率の低減が生じる現象を確認した.
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